紀州いち梅本舗の梅干は契約梅農家である柏木さんのたゆまぬ努力によって完成します。当店がいくら美味しく味付けしても、いくらキレイに漬け上げても、梅が上質でなければお客様に満足していただける梅干をお届けする事ができません。梅の栽培といっても開墾から始め、土作り、苗木の植え付け、剪定など、年間通し、ほとんど休む間も無く梅に接し続けた結果、良質の梅が育ち、紀州いち梅本舗の梅干が出来上がります。柏木さんの梅栽培のほんの一部をご紹介いたします。
梅の栽培は畑の開墾から始まります。
梅の木が無数に育つ紀州の梅畑も、もともとは山だった場所を切り開いたり、荒地を整備して梅畑にしています。なので古い畑の梅の木が弱ってきたりしたら状況しだいでは農地を開墾し、梅の苗木を植える所から始めます。
こちらは竹や茅が茂っていた耕作放棄地を柏木さんが開墾し、梅畑に生まれ変わろうとしています。耕地が整備できたら梅の苗木を植え付けます。桃栗三年柿八年といわれますが、梅もちゃんと収穫できるようになるまでには接木苗で三年、実生だと6年はかかります。畑にいきなり苗を植え付けるのではなく、苗床に一度植えて育ててから畑に定植します。
育った苗木を苗床から畑に定植します
苗床で大きく育った梅の苗木はトラックに乗せられて開墾された真新しい梅畑に植え付けられます。苗が大きいために、ユンボを使って植え付けます。農作業というよりも土木作業に近い、大掛かりな定植作業です。
定植から6年の月日が流れました。
定植から6年経ってようやくこの大きさにまで育ちました。ここまで来るのには大変な手間暇がかかっています。剪定や草刈り、施肥など、収穫以外の手間暇もとてもかかります。梅の木も大きくなりましたが、柏木さんもシブさが増しました。
風光明媚な環境は獣害が後を絶ちません。
柏木さんの何箇所にも点在している農園の全ては自然が豊かで水も空気も美味しい山間部にあります。年間通して獣の被害は後を絶ちません。鉄柵や電気柵で農園の周囲を取り囲んでいても、ちょっとした隙間などを利用してシカやイノシシ等が入ってきます。そうならないためにも柏木さんは農園を日々見廻ってチェックをしています。
山間地の農業は獣との戦いの日々です。人里離れ、空気がきれいで自然が豊かなこんな農園で育つ梅はイノシシやシカの格好の標的になってしまいます。「梅のように酸っぱい果実を動物が食べるの?」と、思われるでしょうけど、シカは梅の新芽や若い枝を好んで食べます。新芽を食べられた梅はそこからなかなか成長しません。イノシシは梅の種が大好物です。柏木さんは来る日も来る日も剪定作業や収穫といった作業と並行して日夜パトロールを続けています。
太い枝が割られています。これはイノシシの仕業です。梅の木に乗って遊ぶのが好きだそうで、折角育ってきた梅の木も台無しになってしまいます。
これはシカの仕業です。細い枝を咥えて引きちぎっています。まだまだ小さな梅の木なのでまた新しく枝が伸びるのを待たないといけません。
2月頃から梅の開花が始まります。
「梅は百花の先がけ」と言われ、まだまだ寒い2月初旬から梅の花が開花を始めます。梅の花を眺め、梅について熱く語る柏木さんの表情は梅の花のようにほころびます。しかし、これからも気が抜けません。ヒョウやアラレ、突風などによる被害、カメムシなどの害虫による被害、獣による被害など収穫まで気が抜けません。
5月頃から梅の収穫が始まります。
美しい梅の実がたわわに実っています。色はまだ緑色。
陽に当たり続けるとだんだん紅色に色づいてきます。
紅がさし、全体に緑色だった梅も黄色くなり、完熟の南高梅になりました。この梅が紀州いち梅本舗の梅干となり、皆様の食卓に上りますが、それはまだまだ先のお話です。洗浄、選別、塩漬け、天日干し、さらに選別して樽詰めなど、まだまだ柏木さんの作業は続きます。